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冷凍されたオシドリとチューリップ人の王国

趣味で書いている小説用のブログです。

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我らの屍衣は真白〈2〉

我らの屍衣は真白(2/3)



 2.

 路傍の萎びた手首を、毛むくじゃらの無骨な手が拾い上げる。無骨な手は、死への畏れも死者への悼みも感じられぬ手つきでそれを大きな袋に放り込んだ。近くに中身の入った靴があり、それも袋に放った。そこらの死者の断片で、やがて袋がいっぱいになると、トラックに戻り、荷台に袋を投げ込んだ。荷台には黒焦げの死者や切り刻まれた死者が、覆いをかけられることもなく積み上げられていた。
 荷台がいっぱいになると、トラックは町の門へ走り出した。
 そのエンジン音でテスは目を覚ました。
 自分がどこで横になっているのかしばし思い出せずにいた。
 それ以前に横になった記憶もない。
 安全なところに避難した記憶もなく、戦っていたことは思い出せたが、敵の言葉つかいを倒した記憶もなかった。
 だが、どうやらここは安全らしい。拘束はされておらず、直射日光の当たらないところにいた。
 テスは井戸の陰に隠れて横になっていた。頭上には屋根があり、近くに戸のない出口があった。出口の向こうには洗濯物を干す台が並んでいる。
 痛む体を起こして見れば、出口の反対側には室内への入り口がある。そちらには戸があった。
 そして、大きなたらいを伏せ、子供が腰を下ろしていた。五つか六つの女の子が、その幼さにそぐわぬ冷たい目でテスを見つめており、胸には女児には大きすぎる本を抱いていた。
『亡国記』
「やっと起きたか」
 テスは女児に、というよりは、本に身を乗り出す。
「キシャ。……ここはどこだ?」
 女児は表情を変えず肩をすくめた。
「派手にやったな」
「そうみたいだ」
 筋肉痛がひどかった。
「そうだ……何か思い出した」
「何を?」
「わからない。思い出せない」テスは目を伏せた。眉間に苦悩のしわが寄る。「でも忘れちゃいけないことだった。大切な……」
「安心しろ、辛いのは今だけだ。じきに何かを忘れたことさえ忘れるさ」
 嫌だと言いたげに、震える息が長く漏れた。キシャは音もなく立ち上がり、干し場に出て行った。砂を踏む足音が聞こえなくなると、今度は屋内からどかどかと足音が迫ってきた。テスは息をのむ。戸が開け放たれると同時に銃を抜いた。
 二人いた。前に立つ男はテスが目を覚ましており、右手の銃を見て取ると、手をあげることも忘れて呼びかけた。
「待ってくれ、俺たちは敵じゃない」
 テスは銃を離さなかった。だが、男は構わず段差を下りて洗濯場に出てきた。その大きな体の陰に隠れるように、女がいた。まだ若く、二十歳を過ぎているかどうかもわからなかった。
 男はテスの前で屈み、顔を近づけた。
「お前は言葉つかいだ。協会に追われてる。そうだろ? 協会の奴らは物理武器なんか使わない」
 テスは警戒し、押し黙った。男は焦りを顔ににじませながら、会話の糸口を探している。
「俺たちは敵じゃない」と、繰り返した。「だから屋根を貸したんだ。密告もしない。俺たちにはあんたが必要なんだ。善い言葉つかいが」
「必要?」喉が痛かった。テスは小さく咳払いした。「何故」
「悪い言葉つかいに抵抗するためだ」
「あいつらと戦うのか?」テスはかぶりを振った、「駄目だ。勝ち目はない」
「このままじゃいけないんだ」
「勝ち目のない戦いをしてはいけない」
 そのとき、建物の奥のほうで、物をひっくり返すような派手な音がした。
『つべこべ言うなババア!』男の怒鳴り声。『他の予約がいっぱいだぁ? 儲かってんじゃねえか』『そんなに儲かってんなら取り分をもっともらわねぇとなあ!』
 目の前の男が憎々しげに、建物へ通じる扉を睨んだ。
「協会の奴らだ。このところ、いつも無理な量の仕事を押し付けてきやがる」
「ここはどこなんだ?」
「洗濯場。それ兼、わけありの子供の保護施設ってところだな。ハウザー洗濯場だ。職員は今は一人」
「じゃあ子供たちが洗濯を?」
 洗濯は重労働だ。
「それでも虐げられているよりはいいんだ。今は俺たちがここを拠点として借りる代わりに仕事を手伝ってる」
「じゃあ、あいつらはお前らを炙り出すために来た」
 その一言で、男が顔色を変えた。
「子供たちでは捌ききれない量の仕事を押し付ける。捌ききれなければ金を取れる。捌ききれた場合、こっそり隠れて手伝いをする大人がいるということだ」
 永い夕日の中で青褪める男にテスは質問を始めた。
「悪い……協会の言葉つかいと戦うと言ったな。お前たちの仲間は何人いる?」
「十三人」
 その数で挑んでも皆殺しにあうだけだろう。
「リーダーは?」
「俺だ。ケンヴィス。みんなはケンと呼ぶ」
「そっちの人は?」
 鮮やかな金髪の若い女は、品定めをするように、腕組みしてテスを見下ろしていた。口を開いて答えた。
「セイヴよ」
「セイヴェリンだ。セイヴって呼んでやってくれ」
「俺はテス」
「テス、お前は最高だ。エルーシヤを殺(や)ってくれた」
「エルーシヤ……あの女の言葉つかいか?」
「そうだ。嫌だ女だ、操屍者……薄気味悪いし、あいつが配属されてから締め付けがキツくなった」
「どういう人だったんだ?」
「凝り固まった選民思想の持主さ。普通言葉つかいってのは、外の世界から落ちてきた奴がなるものだと言われてる。でもあの女は珍しいことに、この世界で生まれた言葉つかいだ。それがあいつをおかしくした」
「俺がエルーシヤを殺したのは、戦いになったからだ。大義のためじゃない」
「わかってる。テス――俺たちを助けてくれ。あいつらの鼻を挫いてやりたいんだ。それだけでいい。それだけで――」
 具体的なことを何一つ言いもせず、ケンが、ぎゅっとテスの手を握りしめた。
「――頼む」

 ※

 居間ではボードゲームが盛り上がりを見せているらしく、興奮した笑いが絶えない。父と、母と、兄と。エリスは六歳。楽し気な空気のいざないに、居ても立ってもいられない。皿洗いを手早く終わらせると、踏み台を下りた。別の踏み台に乗って、胴の電気傘から垂れる紐を引いた。オレンジ色の光が消え、台所が暗くなった。窓のない廊下を通って、薄い居間の戸を開ける。
 一際笑いが大きくなった。
 兄がエリスを見た。
 父と母はエリスを見なかった。
 見なくても笑い声はやんだ。
 エリスは食事のときの定位置である子供用の椅子に乗った。高い座面の上でごそごそと姿勢を変えて座り直せば、テーブルの上には海や森、山や、様々な都市や農村が描かれた大きなボードと、七色の駒、七色のおもちゃの紙幣があり、ダイスが今、父の手で振られていた。エリスはこれが何をするゲームかよく知らない。透き通るピンク色の駒を手に取った。
「よし。石炭の利権、もらうぞ」
 ピンク色。透き通る。きれい。
「ひどいよ父さん。まだ買ったばっかなのに」
 この駒は女の人の形をしてる。どうして?
「石炭の利権を売った金を生糸工場に回せ。工場を増築できるだろう」
「生糸工場なんか増やしたって生糸そんなに売れないよ」
「そりゃ石炭ほどには売れないさ。だが事故も少ない。手堅いぞ」おもちゃの紙幣がやり取りされる。「人生、手堅くいくのが肝心だ」
「なんのはなししてるの?」
 父親は黙る。兄も黙る。おもちゃの紙幣の乾いた音。
 エリスは怖くなる。
「ねえ、お母さん、お皿あらいおわったよ。エリス全部あらったよ」
 手許のおもちゃの紙幣に目を注ぐ母親は、エリスを褒めてくれなかった。
「じゃあ歯を磨いてらっしゃい」
「ねえ、これエリスもやりたい」こちらを見てほしくて、エリスは足をばたつかせた。爪先がテーブルの裏を蹴った。「エリスも入れて」
「これは子供がやるものじゃないの。あんた、負けたら泣いちゃうでしょ?」
「泣かない! 泣かない!」
 母親はエリスを見ずに立ち上がった。
「じゃあ、お母さんの続きをやりなさい。お母さん、明日の準備するから」
 と、いかにも不機嫌に居間を出て行ってしまった。
 エリスは子供用の椅子を下りると、テーブルを迂回し、母親が座っていた大人用の椅子に乗った。またごそごそ動いて座り直す。子供用の椅子より座面が低いぶん、目線も低くなった。
 続きをやれ、と言われても、エリスはルールを知らなかった。今さら聞くのも躊躇われた。
「いいや。お父さんも抜けた」不貞腐れたように、父親は白く透き通る駒をボードの上に投げた。男の人の形の駒だ。エリスを見ず、長男に、言い訳がましく付け加えた。「仕事の準備がある。忘れてた」
 ボードを囲むのは、兄妹だけになった。
 エリスは小さく、手を伸ばしても、ボードの手前のほうにしか届かない。兄は喋らない。エリスは泣きたかった。
「どうすればいいの」
 兄が、ボードの上を滑らせて、ダイスを寄越してきた。
「それ、振って」
 エリスは言われたとおりにした。
 お兄ちゃんは優しい。だって、エリスとも遊んでくれる。
「あんたたち、もう遅いから学校の準備しなさい!」
 廊下で母親が言った。
「宿題したんでしょうね?」
 兄は、何か言いたげな、気まずいような、咎めるような目をエリスにくれた。
「お母さんが言ってるから」
 と、椅子を立つ。
「先生に怒られないようにしろよ」
 居間にはエリス一人が残るのみとなった。
 エリスはダイスを手に乗せて、握ったり、振ったり、転がしてみたり、また手に乗せたりした。すると父親が入ってきた。戸の向こうにいるときから、怒っていることがわかった。大股で寄ってくる。エリスは全身を強張らせた。
 父親がエリスの手首をつかんだ。
「ちょっと来い!」
 立ち上がらされた。大人用の椅子からうまく立ち上がることができず、膝が砕けた。そんなつもりはなかったのだが、抵抗していると思われたらしく、反対の手で髪を掴まれた。父親はそのままエリスを台所に引きずっていくと、皿を洗う水場の前で突き飛ばした。
「何だこれは! 全然洗えてないじゃないか!」
 怒鳴り声が響き、転んだエリスは知らず涙を流しながら抗弁した。
「洗ったよ……」
「じゃあ、これはどういうことだ」
 丸い磁器の皿の隅っこに、油が膜を張っていた。父親はエリスの襟首をつかんで立たせ、左手に皿を、右手に海綿を、強引に握らせた。そして力いっぱい両方の手首を握りしめて、ごしごしこする動作をさせた。
「いいか! 洗うっていうのは、こういうことを言うんだよ! お前はただこすってるだけか、撫でてるだけだろうが。おい。これ、お父さん前にも言わなかった? おい!」
 エリスは泣きながら、声を出さぬよう口をきつく閉じた。
「何度言ったら覚わるんだ? え? お前はいつになったらこの程度のことができるようになるんだ! 役立たずめ。馬鹿。お前なんかいなくなれ。死ね。死ね! 明日は学校から帰ってくるな。今すぐ出て行ってもいいんだぞ!」
「お父さん、外に聞こえるでしょ」
 と、母親の声。それでエリスは解放された。歯も磨かずに自分の部屋に行った。
 部屋の戸は壊れており、きちんと閉まらない。遮光カーテンがかかった暗い部屋に、半開きの戸から、オレンジ色の光が差してくる。
 その光を、ぬっ、と現れた父親の黒い影が塗った。
「どうしてアイツはあんなに馬鹿で使えないんだ! おい! あれはホントに俺の子なんだろうな!」
「当たり前でしょ! 何が気にくわないのよ! 正にその馬鹿で使えないところがあんたの子供の証拠じゃない!」
 母親の影が入ってくる。エリスはベッドの上で、毛布にくるまって眺めている。
「見た目なんか特にそう。ずんぐりむっくりで、顔に締まりがなくて、首が太短いところとかあんたにそっくり!」
「なんだと!」
 父親の影が母親の影の髪を掴む。掴んで殴る。母親は殴られながら、父親の顔や腕をやたらめったら引っかいている。
 エリスは見る。
 見ている。

 ※

「申し訳ございません。こちらもお断り申し上げたのですが、何せお相手がお相手でして……はい。申し訳ございません……」
 老いた女職員が電話口にしきりに謝罪を繰り返す。ケンの話では、彼女の名はシーラ。洗濯場に残る最後の職員だ。ケンとテス、最後にセイヴが足音を立てずにシーラの後ろを過ぎ、階段を上っていく。テスは耐えていた。傷を受けたところが痛かった。左の肩口。背中の右側。右の脇腹。血は固まって皮膚と服とを貼り合わせていた。
 二階の廊下の全ての窓にカーテンがかかっていた。二階の奥に会議室があった。先導するケンが開く。やはり、そこにもカーテンが掛けられ暗かった。
 部屋の中央を十人掛けのテーブルが占めていた。そのため狭く、圧迫感があった。三人の人物が待っていた。全員男で、誰も椅子に座っていなかった。一人は窓辺で、カーテンのひだから漏れる光を肩に浴びて座り込んでいた。一人は黒板の前で腕組みをしていた。もう一人はテーブルに手をつき、枯れた観葉植物に目を注いでいた。
 ケンは椅子に座った。
 テスもそうした。
 セイヴは守護するように、一つしかない部屋の戸の前に陣取った。立ったままでいるつもりだ。
 ケンが深呼吸ののち、わざとらしいほど力強く告げた。
「みんな、こいつが昨日の言葉つかいだ。名前はテス」
 部屋の空気は明るくも軽くもならなかった。窓辺の男が立ちあがったが、それきり変化はなかった。
 テスは本題に入ることにした。
「拠点はここだけなのか?」
 話の仕方に迷うケンの目が、テスへと向けられた。
「いきなり何だ」
「もしそうなら、分散していくつか持ったほうがいい。あまりにも目立つ」
「親切だな、どうも」
 拠点が他にあるのかないのか、口ぶりからはわからなかった。
「そういえばまだ聞いてなかったけど、テスは昨日から停まってる汽車に乗ってきたのか?」
「ああ。化生が出て、この先の線路上の結界を壊したらしい」
「いつ動くんだ?」
「昨日の時点で、早くてあさってと言うことだった」
「それで汽車を下りてホテルに?」
 テスは頷いた。
 言葉つかいの横暴を憎めども、言葉つかいの力と庇護なくして生きることはできない。言葉つかいは化生、すなわち人を喰う異形から、都市を、村を、守っている。
「ケン……戦わずには済まされないのか?」
 ケンが下唇を噛むのを見て取った。再び空気が沈滞する。
 答えたのはケンではなかった。
「俺は東の渓谷の村から来た」
 黒板の前に立つ、逞しい男だった。この中で一番年長に見えた。テスの視線を受け、男は腕組みを解いた。
「俺はワリン。……俺がいたのは……そう、渓谷の村だった。美しい……。貧乏だったが、親父は一本一本アーモンドの木を買い足して、俺たちを育てた。その農地を奴らが奪い取った。アーモンドを全部枯らして、根こそぎにしやがった。許せるか? 親父は今じゃ良くて飲んだくれだ。二日に一度お袋を殴ってる。許せるか?」
「俺たちにだって力があることを見せつけてやらなきゃいけないんだ」と、ケンが身を乗り出す。「誰かがやらなきゃいけないんだ。連中に、自分たちのやり方について考えさせるんだ」
「仲間はいるのか? 連携を取れるような、組織だった――」テスはぎゅっと眉を寄せた。あまり言いたくはなかった。「例えば、新生アースフィア党は」
「駄目だ」ケンが即座に断じる。「奴らは駄目だ。いずれ別の支配を敷くだけだ」
「俺だってあいつらは好きじゃない。でも、本気で戦う気なら、選り好みしている場合じゃないはずだ。でなければ――」
 テスは一旦言葉を切って、室内の五つの顔を順に見た。
 ケンヴィス。セイヴェリン。ワリン。未だ名を知らぬ二人の男。
 それから告げた。
「死ぬしかない」
 この沈黙は、全員、わかっているからだろうか? テスは考えた。それを突き付けられたから?
「それか、俺みたいに、協会の支配域から逃れた他の言葉つかいもいるはずだ」
「北部にはそういう言葉つかいたちがいる。話には聞く。でも今すぐ協力を取り付けるのは無理だ」
「何故今すぐ――」
 振り向き、セイヴが背中を預ける戸に目を向けた。誰か来る。セイヴも気配を察して戸を開けた。
 来たのはシーラだった。入って来て、テスのためのマグカップをテーブルに置いた。その手は老いと長年の洗濯によって荒れていた。マグカップは四角く、赤く、中の液体は甘い匂いがした。ホットチョコレートだ。
「テス。洗濯場に迷い込んで寝ちまったお前を匿ったのはこの人だ」
 テスは老女の目を見た。もとは水色だったであろう虹彩の色は褪せたように薄く、白目が青白い。そのため目全体の印象が青白かった。シーラは愛想笑いをするが、何も言わなかった。
「ありがとうございます」
 何も言わぬまま、一礼して出て行った。彼女がテスを、彼女がこの男たちをどう思っているか、テスはそれでわかった。居心地悪かった。それは彼らも同じだろう。洗濯場から子供たちの声が聞こえてくる。
「言葉つかいの連中は必ず駅に張り込む。わかるな、テス? お前を逃がすつもりはない」
「だから今すぐ戦うと?」
「奴らを襲撃するまたとない機会だ。感謝するぜ」
「武器は?」
 テスはまた、眉をぎゅっと寄せてしまっていることを自覚した。
「狙撃銃が一丁」
 思わず頭を振る。
「機関拳銃が二丁。拳銃が十一丁。他に手榴弾」
「それだけか?」
「それだけだ」
 目の前が暗くなる感じがした。
「狙撃銃を扱える人は?」
「そこのマニが辺境警備の仕事をしていた」
 窓辺に座っていた男だ。
「武器はどうやって調達したんだ?」
「武器商人なんざ、誰にでも武器を売るもんさ」
「その武器商人が密告しないってどうして言えるんだ? 武器を売るより金になるかもしれないのに」
「まさか。そんなことしたら連中だって商売あがったりだ」
 テスは思いを飲み込んだ。
「……死んだエルーシヤを除いてあと何人の言葉つかいがいる?」
「六人。だが全員が駅に張るわけじゃないだろう」
「エルーシヤを殺されて頭にきているはずだ。数は多めに見積もったほうがいい。攻撃を実行するのは駅周辺の言葉つかいの数と位置を確認してから――」
「ちょっと」セイヴが遮った。「さっきからあんた、何なの」
「何って」
「本職?」戸から離れ、歩み寄ってくる。「元の世界で? そうなの?」
「本職だとしたら、何の本職だって言うんだ? そんなことはどうでもいい」
「話を続けよう。テス、いい、セイヴも……。もっと言ってくれ。何でも役に立つことを」
「狙撃のポイントは?」テスは要求の通りにした。「武器の持ち運びかたは?」待つが、答えはない。「狙撃手は一人しかいないんだろう。もし、狙撃銃の死角に言葉つかいが陣取った場合はどうする? 待つか? 動くのか?」それでも、誰も何も言おうとしない。「言葉つかいじゃない、武装した協会員にはどう対応する?」何も言えないのだ。
 テスはこう締めくくった。
「一緒に考えよう。俺もこの街から出て行きたい。でも、今言ったことに最低限の答えが出ない限り協力はしない」
 ケンは既に打ちひしがれたような顔だった。テスは宥めるように言った。
「死ぬために戦うような真似だけはやめるんだ」





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