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冷凍されたオシドリとチューリップ人の王国

趣味で書いている小説用のブログです。

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こうくん。(2)

こうくんは小さく、
端正で、利発そうな顔だ。
事実利発な子だ。

こうくんが家に来たら
かわいがってあげよう。
こうくんは小さいから、
たくさん撫でてほしがる。
たくさん撫でてあげよう。
たくさんなつくはずだ。

こうくんはなついたら、
左手にお靴をぶらさげ、
右手に拳銃を持って突き付け、
「あそびにつれていってください」
と言うだろう。

疲れるから嫌だと言ったら、
こうくんは引き鉄を引くだろう。
こうくんが引き鉄を引くと、
ぽぽぽぽぽんとシャボン玉が出るので、
あなたはやられてしまう。

こうくんは、女王陛下の騎士だから、
遠い星の戦に行く。

だからその前にたくさん、
思い出を作ってあげよう。
海に連れて行ってあげよう。
山に連れて行ってあげよう。
都市に連れて行ってあげよう。
どこにでも望む場所に。

こうくんは小さいから、
プラスチックのおもちゃが欲しい。
たくさん買ってもらっても、
まだ欲しくて、
でももう買ってもらえないとなると、
「ええん、ええん」と泣く。

磁石がついたお魚と、
磁石がついた釣り竿の、
プラスチックの釣り堀セットを胸に抱き、
「ええん、ええん」と泣く。

抱き上げて連れ去ろうとしても、
腰をホールドされたまま暴れるから、
逆さ吊りになってしまう。
「かってくれないなら、きらいになっちゃう。だいきらい」と、
大きな声で叫ぶ。

こうくんが戦争に行くことを
あなたは思い出してしまう。
だからどうしても、
わがままを聞き入れてしまう。

こうくんは小さいから、
戦争を知らない。

敵とは、わがままを聞き入れない
大人のことだと思っている。

殺すとは、シャボン玉鉄砲で
人を撃つことだと思っている。

殺されるとは、「やられた」と叫んで、
また起き上がることだと思っている。

こうくんが真実を知るのは、引き返せなくなってから。
本当のことを知って、少し大人になり、
半分大人になり、全部大人になる。

その薄い肉付きは、細く締まった体となり、
弾ける溌溂さは、静けさに息を詰めるアパシーな魅力となり、
シャボン玉鉄砲を持つのをやめ、軽機関銃をぶん回す。

乳と菓子のにおいは失せ、
女を知り、死を知り、
危うげな色気を纏う。

でもそれは先の話で、
こうくんは小さい。

こうくんは小さいから、
背負うリュックも小さい。
山ほど買ってもらったおもちゃも、
ひとつしか持って行けない。

こうくんはたくさん悩んで、
磁石が付いたお魚たちの
釣り堀セットを選ぶ。

リュックにしまい込んで、
星の船を目指す。
真っ暗な夜道で、
三輪車をキコキコ。

優しくされたことを、
こうくんは忘れない。
きらいと言ってしまったことを思い、
胸を痛めて泣く。

こうくんは小さいけど、
逞しい男になり、
木枯らしが吹く夕暮れ、
あなたの枕もとに立つ。
そのとき、病んだあなたは、
そのとき、老いたあなたは、
あの日山ほど買ったおもちゃのしまい場所を、
枯れた指でさすだろう。


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とよね

Author:とよね
ファンタジーやSFをメインに小説を書いてます。下のカテゴリ欄から読めるよ!
★印つきは連載中。

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