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冷凍されたオシドリとチューリップ人の王国

趣味で書いている小説用のブログです。

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虹よ、契約の虹よ〈21〉

八章 憑依者たち(3/3)



 3.

 最低週に一回ホテルを取る、というのが、二人が旅を始める前に決めたことの一つだった。あまり疲れた様子を出せば不要な注目を集める。子供連れとなった今はなおさらだ。
 金曜日と土曜日は、観光客を装って連泊できる。明奈とかなめ、ありかの三人は、横井姓を名乗って地上市のホテルをとった。階層都市の外れなので、地上市でもさほど値は張らない。地上十五階のスイートルーム、夕食なし、朝食バイキングつき、二泊、大人二人に子供一人、これで五万で釣りが来る。
 貯金はかなめが持ち歩いていた。明奈も一応はミツバ霊能研究所の外部協力社員ということで賃金を支払われていた。未だかつて自由に使えたことのないそれも、今はかなめがまとめて持っている。
 かなめがランドリーから部屋に戻ったとき、明奈は化粧を落としている最中だった。
「おばさん、飯買ってきてくれた?」
 男物の服に着替え、明奈がアキヤになってユニットバスから出てきた。
「君が買ってこい」
 部屋には照明が白々しく点り、ごく控えめな音量でテレビが流れていた。時刻は七時半。番組は、東国公共放送局の『きょうの国会ダイジェスト』だった。
 タオルから顔を上げたアキヤは驚いた。
「お嬢ちゃん、渋いもん見るねぇ!」
 が、ありかはテレビを見ていなかった。朝アキヤが結ってやったツインテールのまま、水色のブラウスの胸ポケットを指で広げて覗き込んでは首を傾げたりしている。
「何やってるんだ?」
 ソファの後ろに回り込んで尋ねると、ありかは振り向き、さしておもしろくもなさそうに答えた。
「ポケットでリス飼ってる妄想……」
「あっそう……」
 アキヤはありかの横に座った。かなめはルームサービスの天然水を自分の分だけ持ってきて、アキヤの向かいに座り、蓋を開けた。そして、いつも通り用件だけ尋ねた。
「下見はいつ行く」
 晶が通う全寮制の学校、清佳大学付属高校のことだ。
「今夜。一人で行く。おばさんはこの子見てて」
「一人でというわけには行かないだろう」
「白夜は出さない。それなら問題ない」
 ありかは胸ポケットを覗くのをやめ、国会議員の殴りあいの大乱闘をおもしろそうに眺めている。
「寝込みを襲うか」
「所在を確かめてから考える」
「どんな子だったんだ? 日野晶は」
 思いもしない質問だった。
「どんな子って……」
 反射的に聞き返しながらも、心は自動的に記憶を探っていた。
 晶。父親のことは覚えていないはずだ。晶。父親は、彼女が物心が付く前に、勤務中の事故で亡くなった。晶。貧しさしか覚えていないはずだ。晶……。
 貧乏で、いつもいじめられていた。母親が復元教会に入れ込むようになってからはますます酷くなった。じきに学校にも行かなくなった。そうなる前、明奈は晶の手を引いて、一緒に登校した。図書室に残って、宿題の作文を仕上げるのを見ていてやったことがある。

『こころは、かみさまがわたしたちにくれた、きれいな大きなおうちだとおもいます。とてもすてきなおうちです。
 ある日、あくまがきて、すてきなおうちをすこしずつよごします。いやなにおいや、ききたくないおんがく、みたくないかざりもので、おうちのなかをよごします。それはだんだんふえていきます……』

「やけに感覚の鋭いところがある子だったな。それがどうかしたか?」
 予想以上に鮮明に思い出されたことでアキヤは戸惑ったが、顔に出さないようにした。かなめは無表情のままだ。
「聞いただけだ」
 アキヤは次第に居心地が悪くなってきた。晶のことを思い出すとじっと座っていられない。立ち上がり、窓にカーテンを引いて、浪越の夜景を閉め出した。
「あっ、お外見たいよ!」
 ありかがすかさず抗議する。アキヤはソファに戻り、ありかの肩に力強く手を置いた。
「だーめ、外は危険なの」
「どうして?」
「黒姫でのこと、忘れたのか? お嬢ちゃんのことを追いかけてる奴がいるんだよ。お嬢ちゃんが町を壊したと思ってな。何度も言ってるだろ?」
 ありかは不信と恐怖が複雑に入り交じる目でアキヤを凝視した。
「そいつらは恐い奴だからな、つかまるわけにいかないんだ。兄ちゃんはありかのお母さんと約束したんだよ、そいつらにつかまらないようにって。な?」
 かなめは音も立てずにボトルの水を飲んだ。
 もはや彼女たちの目に見えなくなった都市の夜景。
 ホテルから見下ろせる位置にはハンバーガーチェーン店がある。その窓辺に、アクセサリーをつけて着飾った若い男と、その腕にしがみつく若い女が姿を見せた。二人は中身の残っているフライドポテトとジュースのパックを躊躇なくごみ箱に投じ、窓辺から離れた。
 ハンバーガー店が入っているビルの陰では、帰る家のない一人の男が伏している。具合が悪いのか、単に眠っているだけなのか、通り過ぎる人は気にしない。
 父親と母親に挟まれ、かわいらしい幼い少女がその近くを通り過ぎていく。両手はしっかり両親の手に握られており、父親はおもちゃ屋の包み紙を抱え、母親はケーキ屋の紙袋を下げている。
 親子が目もくれずに通り過ぎた地下市へ下りる階段。その下では、先ほどの少女と同じくらいの年の、だが着るものが汚く髪も梳かれていない少女が膝を抱えている。少女の父親はもう何週間も帰ってきていない。今日は知らないお兄さんが母親に会いに来ている。お兄さんが帰るのはたいがい次の日の朝だが、それまで少女は家に入ってはいけない。入ったら殴られて、また外に放り出されるのだ。
 少女の目の前を、何台ものマイクロバスが通り過ぎていく。
 バスは地下市のさらに地下、深地下工場地帯の出入り口で停まった。その駐車場の奥に、各工場へ労働力を送り込む派遣会社の事務所があるのだ。バスから降りてくるのは、九州から連れられてきた、疲れた目をした若者たち。『高時給』『友達もたくさんできる!』の謳い文句に吸い寄せられてきた者たちで、まだ高校に通っているような年の子もいた。
 実際には、時給は七百八十円。尾張管区の最低賃金だ。雇用保険なし。有給制度なし。残業は日に三から四時間。彼らはこのことをマイクロバスの中で初めて知らされた。
「待ってください。保険にすら入れないなんて」ついこの前まで大学生だった一人の青年が、走行中のバスの中で声を上げた。「こんな就業条件は違法です。最初と話が違いすぎる」
「そんなん言う人にはいてもらわんで結構です」
 車内の通路に立つスーツの男が低い声で応じた。阪都訛りが強いが、自然に身に付いたものではない。威圧するために拾得したものだ。
 その言葉と言いかたに、車内は凍り付いた。
「あんた方には働き口がない。ここには働き手ぇがない。そういうのをわかった上で、互いの利益が一致するいう話で来てもうたはずです。それを今更嫌やってんなら、自費で廃墟に帰ってもらいますわ。どうします?」
 男は座席に座る若者たちをねめ回す。出稼ぎをあてにしている家族の顔を思いめぐらす、若い労働者たちの顔を。
「今は国中が大変なことになっておりますねん。知ってますやろ? 景気も悪いし、誰もが自分の好きなように働けるわけとちゃいますわ。そんな自分のことしか考えてへんようではあきまへん」
 こうして荒れ果てた九州南部から若者をだまして連れてくるのは三回目だが、外部に訴えられたことはない。相互に監視させ、いかにきつい労働を長時間行ったか、奴隷の鎖自慢をするように導けば、そんなことはしなくなるのだ。
 若者たちは今、深地下工場へ通じる事務所へと吸い込まれていく。
 格差と欺瞞、使役と繁栄を乗せて、都市は自らの重みに軋む。都市は痛み、軋む。
 まばゆいばかりの冷たいきらめきを、鉄塔にたたずむ黒衣の女が見下ろしている。鉄の足場を踏みしめる足は頼りなく震えている。女は頭を振って長い髪を払い、両目の涙を振りまいた。蒼白な顔が露わになった。悲壮だが決意を秘めた顔だった。女はその目を、先週妹が死んだ市営運動場前駅の方角へ注いだ。
 左手の小瓶の栓を抜く。コルクが地面に落ちていく。
 小瓶の中の油を、女は空中に散布した。その滴は、月の光から遠ざかり、都市の光に呑まれていく。
 一滴、タクシーの屋根に落ちた。『個人』と書かれた黄色いランプが点るタクシーの屋根は、不自然に大きく不吉な音を立てた。運転手は鉢植えでも落ちてきたかと思い、路肩に車を停めた。
 外来宗教・新宗教・新新宗教の受け入れ地区だった。タクシーの運転手は、外来宗教や新宗教の信徒ではない。土地代が安いので、この地区に中古住宅を買い求めて住んでいる。
 運転手は車を降り、助手席側に回って屋根の上を確かめた。背伸びをしてよく見てみたが、何の異変も見いだせなかった。
 首を傾げて運転席に戻り、車を発進させる。二つの尖塔をいただく浪越司教座聖堂の前を通り過ぎ、幾筋もの道を縫い、彼の自宅に帰っていく。
『加瀬』という表札がかかった二階建ての民家の駐車場で、タクシーはエンジンを切った。

 ※

 教会に帰ると、行き先表のマグネットをひっくり返す。表が白、裏が赤になっており、どちらにも名前が印刷されている。その名札が白になっていれば、教会にいると言うことだ。隣に行き先を記す欄がある。〈料亭『鳥羽(とば)』〉の文字を消した。酔いは醒めていた。シャワーを浴びるつもりで、まずパジャマを取りに司祭館五階の自室に向かう。
 階段を上ると、その正面にある自室の襖の前に段ボールが置かれていた。足音を聞いて、主任司祭の平沢が彼の部屋から出てきた。
「遅かったね」
「平沢神父」一応、門限は十時と定められているのだ。料亭『鳥羽』を出た時点で十時を過ぎていた。「すみません。ご心配をおかけしました」
「こちらからの電話にはちゃんと折り返すようにしなさい。それとご実家から荷物が届いてたぞ」
 椙山は平沢と目を合わせたまま嬉しそうに笑みを浮かべた。
「きっとお菓子ですよ。一緒に開けましょう。みんなで食べられるものを送ると母が言っていました」
 二人は廊下で段ボール箱を開いた。中には一通の封筒、真空パックされたきな粉の小袋と、同じく真空パックされた小箱があった。地元の町で有名な、老舗の和菓子屋のものだった。
「わあ、わらび餅だ」
 椙山はすっかり嬉しくなった。
「平沢神父、これ、みんなで食べましょう」
「ああ。でも全員そろうのはあさっての夜までないぞ」
「そうなんですか?」
 あさっては日曜日だ。
「ああ。みんなそれぞれ研修だとかで、朝のミサの後などは三人しかいない。私と藤巻神父と君だ」
「そうなんですか」ふと寂しいものを感じた。「じゃあ、これは真空パックのまま冷蔵庫に入れておきますね。あさっての夜食べましょう」
 それから、封筒を手に取った。母の筆跡で手紙が綴られていた。

『光(れい)へ

 メールをありがとう。お母さんはメールを打つのがやっぱり苦手で、お手紙を書くほうが好きみたいです。お返事が遅くなってごめんね。
 心配してくれたとおり、光の言うとおり、確かにいろんなことを言う人はいます。だけど、そんなのは、あなたを知らない人ばかりです。
 お父さんはあの事件以来、新聞をいくつも買って、あなたに関係する記事を切り抜いて集めています。このことはあなたに言うなと言われているので、お父さんに会っても黙っていてね。お父さんはお酒が入ると、誰にでもあなたのことを自慢します。
 あなたの中学校のお友達も、気にして遊びに来てくれます。心ない噂をする人のことなど、お母さんは気にしたことはありません。みんなあなたのことが大好きです……』

 椙山はその手紙を、大切に封筒にしまった。

 ※

 午後十一時。マンスリーマンションの一室には、結局自腹で五万円ばかりを支払わされて機嫌を損ねているパジェット、酔った夫の醜態を目の当たりにして機嫌を損ねている乙葉、今さら瀬名水映の攻撃的な仕打ちに腹を立てて機嫌を損ねている井田の三人が集まっていた。部屋は1LDKで、六畳の洋室には二台のベッド。乙葉とパジェットの荷物が広げられている。三人はリビングにいた。テレビは民放のニュースを流しているが、誰も聞いていなかった。
「なあ」
 井田が不機嫌なまま口を開いた。
「例の戦闘祓魔師(ハイエクソシスト)、どんな人だったんだ?」
 井田はパジェットと乙葉を見た。乙葉が視線を受け止めた。乙葉はパジェットを見る。パジェットは乙葉を見ていた。
 それで、乙葉は椙山光のことをよく思い出した。が、つかみどころのない人物で、止めどなく大好物の魚を食べている姿しか思い出せなかった。その食べっぷりに遅ればせながら感動た。
「猫みたいだったわねえぇ!」
 夫に同意を求める。
「ああ」少し冷静になったパジェットにも、その感動が伝播した。「猫じゃらしで遊ぶかもな」
「どういうことなんだ?」
 パジェットは詳しく話を聞かせてやろうと思ったが、我が物顔でソファにふんぞり返っている後輩の生意気なツラを見た瞬間、どうでもよくなって適当に答えた。
「耳が三角でしっぽが生えててキジトラ模様だった」
「ふざけるな」
「お前がふざけるな」
 井田が身を乗り出してきた。
「俺はふざけてない」
「はあ? 瀬名とかいうのとおかしな接触の仕方しやがって、その様で何が『ふざけてない』だ。お陰でこっちから頭下げる形で顔合わせしなきゃ――」
 そこまで言ったとき、『両国同心社』の単語が耳に飛び込んできた。三人は同時にテレビに目を向けた。
『柚富(ゆふ)で戦死した両国同心社の社員の国葬が、本日、西国護王神社にて行われました。境内の外には国葬に反対する市民団体と、国葬を支持する市民団体とが詰めかけ、一触即発の緊張に包まれました』
 画面が切り替わり、護王神社の境内と広大な鎮守の森、その外側に展開する無数の人の頭の空撮映像が映し出された。
 チャンネルが切り替わった。いつの間にか、井田がしかめ面でリモコンを握っていた。
 別の局のニュース番組が、また別のニュースを流していた。
『……贈収賄疑惑をかけられていた田原大臣が復席した直後、乱闘……』
「チィッ!」
 舌打ちし、井田がチャンネルを変える。
 今度は市民討論のバラエティ番組で、画面右下に派手派手しく見出しがあった。
〈カグラC1墜落は天罰!? 船越議員の発言は是か非か!〉
『そうやってですねえ! 天罰天罰って言って煽っておけば第一愛徳丸の船員への補償問題をうやむやにできるっていうですねえ! そういう考え方がですねえ!』
 化粧の濃い中年女性がそこまでまくし立てるのを聞いてから、またチャンネルが変わる。
『そしてこの俳優の豚田馬鹿麿さんですね、不倫がこうして報道されるの三度めなんですよ。パネルを用意いたしましたので振り返ってみましょう』
 またチャンネルが変わる。
『東都の和牛ステーキ店の中で一、二を争うといわれるこちら、〈幽玄〉さんにお邪魔しておりまーす!』
 今度はグルメ番組だ。
『九州動乱以来、肥後管区産和牛を入荷できないということでお店を閉めてらしたんですが、なんとですね、先月、西国の神戸(かんべ)市より極上の神戸和牛を入荷してですね! 新装オープンとなりました! 肥後産のあの独特の風味と食感が損なわれるのではないかとご心配される方も多いのではないかと思うのですが、あっ、ちょうど運ばれてきました。うわぁ、おいしそう……』
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
 井田が腹と心の底から吼えた。リモコンを天井に向かって放り投げたかと思うと、立ち上がり、テレビに大股に歩み寄ると、どうするのかと思い息詰めている長谷部夫妻の前で壁掛けテレビを乱暴に両手で掴んだ。壁のホルダーから外し、ケーブルをすべて引っこ抜く。
 そして、窓に向かって投げつけた。
 テレビは窓ガラスを破り、ベランダを飛び越えて、都市の闇へ消えていった。
 パジェットは硬直し、乙葉は顔面蒼白になった。が、幸いにも真下は運河で、テレビは誰にも何にも当たらず「どぼーん」と間の抜けた音を立てて深い水に沈んだ。
 パジェットは、窓から吹き込む爽やかな夏の夜風を胸一杯に吸い込んだ。
 それから井田に指を突きつけた。
「お前さぁああああああああああああああああああああっ!!!」
「うるさい! 俺は何も見たくない! もう何も見たくないんだ! うおぉっ!」
 まだ呆然としている二人を残し、玄関に向かうと、そのまま部屋を出ていった。

 ※

 十一時半。アイリーンは急いでいた。早く帰らなければならない。呪詛の塊がこの水早区にたどり着いていることにはとうに気付いていた。意図的に感覚を鈍くしなければ、めまいと頭痛で倒れそうだ。
 夕方から既に、自宅で温ワインを一本あけていた。それからオイスターバーに行った。魔女は感覚を重んじる。満腹は嫌いだ。酒も嫌いだ。だが今ばかりは鈍くならなければ耐えられなかった。
 飲食で散財するのは日本に来て初めてだった。旬でもない牡蠣を、はちきれるほど腹に詰め込んで、酔い切れぬまま店を出た。気がつけば、向かっているのは椙山光の居場所だった。
 浪越司教座聖堂。
 夜も遅い。行っても何にもならないと思っていた。だが行ってわかった。
 教会は包囲されていると。
 司祭たちが暮らす建物は暗く、みな何も知らずに寝静まっているようだった。
 アイリーンは教会に背を向けた。誰にも姿を見られたくなかった。
 そのとき、強烈な悲しみに胸を衝かれた。
 母に背を向けたように感じられたのだ。娘が魔女になることに、あれほど反対していた。反対を押し切り家を出た。そして今、徐々に恐怖が浸食する、異国の街にいる。
 涙さえ出そうになった。
 帰るものですか。心に強く言い聞かす。ここで尻尾を巻いて帰って、何が決意だ。何が才能だ。何が人生だ。
 教会を遠ざかると、道端に、タクシーが一台停まっていた。そばに運転手が立って、車の異変を調べている。
 タクシーは屋根の上にラバを乗せていた。
 燃える蹄で屋根を踏みしめ、尾を振り周囲を照らして警戒している。
 運転手には見えていない。
 アイリーンも見えないふりをした。
 走り出したいのを堪え、懸命に歩調を保った。
 タクシーが後ろに遠ざかる。やがてエンジン音がして、タクシーは教会がある方向へと走り去っていった。
 アイリーンも走り出した。今のところまだ安全な……そのはずの我が家へ。




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(第二部序文『セイルから、わたしを呼ぶ者がある……もう一度来るがよい。」』は、日本聖書協会『聖書 新共同訳』イザヤ書21章11~12節からの引用になります)


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Author:とよね
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★印つきは連載中。

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