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冷凍されたオシドリとチューリップ人の王国

趣味で書いている小説用のブログです。

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虹よ、契約の虹よ〈9〉

三章 七番目の司祭(3/3)



 3.

 真為はもう三時間ばかし、司祭館一階のホールで待っていた。何も連絡がない。この三時間もの間、不安を持て余してぶらぶらと外に出たり、立ち疲れて中に戻ったり、つけていいと言われたテレビをつけたり消したりして過ごしていた。
 門扉に立つも、ランプ街を行き交う人の中に、椙山の姿は見えない。悪いことに小雨が降り始めた。再び司祭館に戻り、テレビをつけてみた。
 ちょうど、一つのCMが終わるところだった。
『割り箸からロケットまで。私たちはミツバグループです』
 何も悪いことはしていないのに、心臓がぎゅっと縮まった。息を止めてテレビ画面を凝視した。場面が切り替わり、昼の民法のニュースが始まった。
 昼のニュースは、九州の動向から始まった。
 呪詛の暴走に立ち向かえるのは聖務防衛軍しかいない。呪詛に物理的な兵器は効かないのだ……その宿主である相澤序峰に対しては別だが。暴徒に対しては国務防衛軍をぶつけるべきだろうか? 社会主義の一団が主張する通り、警察特殊部隊だけで足るだろうか。
 いずれにせよ、どちらの国有軍に対しても出動令は出ていない。だが、クーデター寸前とまで噂された国務防衛軍の動きが報道されないところを見ると、水面下での動きが進んでいるはずだ。
「続いてのニュースです。先月六月一日、東都市氷川(ひかわ)区のミツバ霊能研究所に勤務する石川かなめさんと、被験者の日野アキヤさんが行方不明になっていることがわかりました」
 真為は凍り付いた無表情をテレビから動かさない。
「石原さんと日野さんが最後に目撃されたのは先月六月一日の午後一時、皇都で行われる講習会に向かうため社用車に乗り込んだのを最後に行方がわからなくなりました。移動に使われた車は氷川区の海中から発見されており、二人の携帯電話や現金、身分証明書などは車内に残されたままでした。警察は何らかの事件に巻き込まれたものと見て捜索を続けておりましたが、本日公開捜査に切り換えられました」
 なるほど、こういうやり方で探し始めたのか、と、やけに冷静に思った。石原という女と、続けて日野アキヤ、懐かしい幼なじみの顔と特徴が映し出された。アキヤは、なるほど、かっこよかった。先入観を持たずに見ても、一瞬女の人かと思うことだろう。
「明奈ちゃん」
 ごく自然に口から言葉が出た。が、呼びかけたところで、それはテレビの画面でしかなかった。
 スーツのジャケットの中で携帯電話が震えた。次のニュースに切り替わるまで、真為は未練がましくテレビを凝視し続けていたが、指はポケットから携帯電話を引きずり出していた。インターネット接続機能のない、民間用の携帯電話だ。液晶には、『お父さん』と文字が出ていた。
「もしもしお父さん?」
「真為か?」
 他に誰がいるというのか。
 父・川原哲夫は、電話の向こうで深々とため息をついた。
「真為、昼までには電話するって言ってただろう。心配したじゃないか」
「あ、ごめん。忘れてた」
 と、悪びれもせずに軽く返した。
「速報で見たけど、そっちでSランク警報が出たんだって?」
「郊外だから大丈夫だよ。防壁に異常ないし」
「そうならいいんだが……」唾を飲む音が聞こえた。「例の祓魔師の人は力になってくれそうか? どういう人だった?」
「どういう人? 力になってくれると思うけど、うーん、どういう人……」
 繰り返してから、真為は考え込んだ。
 よくわからない人、というのが正直なところだった。二十分程度話しただけで相手がどういう人か判断する目を、真為はまだ持っていない。頼もしそうではあった。だが若すぎる気もする。それに真為は、戦闘祓魔師がどういうものかさえ詳しく知らないのだ。祓魔師として頼れそうかどうかなど判断しようがない。
 ありありと思い出せる椙山の笑った顔を思い出し、その最初の印象を口にするとき、真為はミサの前に会った二人の気持ちがわかった。彼女たちも、どこか椙山に対して感じる親近感と近寄り難さの両方を込めてこう言ったではないか。
「かっこよかった……」
「は?」
 当然、父親はまごついていた。
「いや、もっと何かこう、内面の話をだな……」
「ああ、そうそう。話し合いの途中で抜け出して、いなくなっちゃったのよ」
「どこに行っちゃったんだ?」
「今警察で取り調べ受けてる……」
 今度の沈黙は長かった。
「……その人で大丈夫なのか?」
「大丈夫なんじゃないかな。もう色々話しちゃったよ。明奈ちゃんの今現在の件以外ね」
 娘の判断をどう受け止めていいのかわかりかねるのだろう。
「他は?」
「ああ、そうそう」
 真為は一つ思い出して、付け加えた。
「カソックが猫の毛だらけだったよ」





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(※本文中の祈祷文『主イエスは渡される夜、……わたしのからだである』は、『キリストと我らのミサ(改訂版)』からの引用になります。)


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Author:とよね
ファンタジーやSFをメインに小説を書いてます。下のカテゴリ欄から読めるよ!
★印つきは連載中。

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