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冷凍されたオシドリとチューリップ人の王国

趣味で書いている小説用のブログです。

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昨日の夕ミサでの出来事。

私は大体日曜日ではなく、土曜日の夕方に行われる主日の前晩のミサに参加している。

昨日のミサの中で、司祭が聖別されたパンを信徒に授ける聖体拝領と呼ばれる儀式が終わったときだった。
一人の信徒が聖堂に駆け込んできた。
デニム生地のジャケットと黒いひざ丈のスカートをまとった、長い黒髪の女性だった。彼女は静かに走り、拝領が行われる内陣の前に来て立った。司祭はご聖体を収めたチボリウムと呼ばれる器を祭壇の奥の聖櫃に収めるところで、会衆に背を向けていた。
そこで、白い祭服をまとった侍祭の青年が振り向いた。
侍祭は司祭に何事かを早口で囁いた。司祭が振り向き、女性に気が付くと、仕舞いかけたチボリウムをもう一度手に取った。司祭と侍祭はそれぞれ祭壇の左右を回り込むようにして内陣から身廊と翼廊の交差部に下り、女性にご聖体を授けた。女性はそれを口に入れると、走って、しかしあまり音を立てずに聖堂から出て行った。

その女性はきっととても忙しくて、それでも聖体拝領の儀式だけは受けたかったのだろう。
明日の朝のミサではなく、今日の夕ミサでなければならない事情があったのだろう。
もしかしたら、仕事中だったのかもしれない。それはわからない。
とにかくその人にとっては大切なことだったのだ。

私は帰りの電車の中で、ぼんやりしながら様子を思い出していた。

聖体拝領の儀式が終わる。
信徒たちが長椅子に戻り、最後に侍祭がご聖体を受け取る。
司祭と侍祭が祭壇を回り込むように二手に分かれ、二つの廊下の中央交差部と内陣とを隔てる段差を上っていく。司祭がまとう、背中に金糸で十字架が縫い取られた緑の幄衣(カズラ)が揺れる。司祭は会衆に背を向けて、祭壇の奥の聖櫃にチボリウムを収める。そこに女性が入ってくる。侍祭が気付く。司祭に囁く。司祭が振り返る。閉ざされた聖櫃が再び開く。侍祭と司祭が左右に分かれ、祭壇を回って廊下の交差部に戻る。緑のカズラが揺れ、司祭の手が女性にご聖体を授ける――。

何故だか目に焼き付いている印象的な出来事だったので、書き残しておきたい。


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