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冷凍されたオシドリとチューリップ人の王国

趣味で書いている小説用のブログです。

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虹よ、契約の虹よ〈1〉

一章 劫此の姫(1/3)

















神殿で会おう、聖所の中で。
聖所の扉を閉じよう。
あなたを殺しに来る者がある。
夜、あなたを殺しにやって来る。

(旧約聖書『ネヘミヤ記』)















 1.

「起きて」脇腹に手が置かれた。軽い手だ。その手が体を揺さぶった。「きれいな星空よ」
 そう呼び起こす妻の声は不穏に満ちており、言葉の内容とはかけ離れていた。
 なるほど、星はきれいかもしれない。
 パジェットは薄目を開けた。彼の重い体は、なおも居心地よいベッドの上で休息を求めていた。大きな男だ。身長は二メートルほど。白いランニングシャツから伸びる太い腕は、砂色の体毛に覆われている。それと同じ色の髪は肩まで伸びるがままで、今は枕の上に散っていた。灰色の目から放たれる視線が、薄暗い室内を油断なく跳ねまわり、カーテンに、掛け時計に、クローゼットの扉に、乱反射した。彼は身を起こしてサイドテーブル上の片眼鏡(モノクル)を手に取り、左目に装着した。
 足を床におろし、彼はしばらくベッドに座り込んだままでいた。表情は険しかった。妻はもう彼を呼んでいない。
 振り向いた。妻の乙葉がいた。短い前髪、整った眉、その下にある両目は闇の夜空で、星々が瞬いていた。彼女が口を開くと、そこでは赤い星が燃えてた。それで、これもまた夢なのだと、パジェットは悟った。
 パジェットは立ち上がり、サイドテーブルの下から擲弾銃を手に取った。それを腰に装着する。
「どうするつもりなの?」
 乙葉が尋ねた。
「殺す」
「一人残らず?」
「ああ」
「どうやって」
 質問を重ねる乙葉を、パジェットは見ない。からっぽで、闇と星しか入っていない、そんな妻を見たくなかった。
「私たちは転移術を使えないわ」
「向こうから来てくれるさ」
 おかしな夢だった。自分たちが柚富(ゆふ)にいることは夢でもわかっているのに、この寝室は東都の自宅なのだ。そしてたちまち場面が変わって玄関に移った。ポーチから、遥か遠くの九州の柚富市が眼下に見えた。
 美しい町の上に、暗黒の星が鎮座する。その星から、人間の出来損ないが降ってくる。ばらばらになった人体のパーツを適当にくっつけたようなものだ。赤子の頭部から直接太い大人の男の腕が生えたもの。右足、胴、左手、左足、それから長い黒髪が紐のように縦一列につながったもの。腰の上からも下からも足が生えたもの。その全てが蝶の羽根を得て地に降り立ち、降り立った先で爆発するので、町は劫火に焼き尽くされているのだ。
 黒い炎である。

「起きろ!」
 今度こそ起こされた。男の声だった。井田だ。悪夢からの解放を得、パジェットは素早く両目を開いた。それからベッドに腕をついて跳ね起きた。明るく、焦げ臭かった。朝で、焼け跡だった。パジェットを起こした男、同僚の井田が早口で囁きかけた。
「乙葉さんがいないぞ」
 左目に片眼鏡をかけ、その薄いレンズ越しの視線を井田に注いだ。短大を出たばかりのこの青年は、生来の老け顔のパジェットと比べるとより一層若く見える。性格が純粋なせいか、幼く見えるほどだ。
「何だって?」
「今、柿崎と武藤が探してる。近くにいるはずなんだ」
 パジェットは立ち上がると、夢でそうしたように、サイドテーブルの下から擲弾銃を出した。本当は、銃ではなく神器だ。彼のこの神器『流天目(ながれてんもく)』に、弾は込める箇所はない。代わりにカートリッジが外付けされている。カートリッジに詰められた聖域の土や水などから、その聖域を守護する神々の力を撃ち出すのだ。
 両国同心社の制服が枕もとに吊るしてあった。それをシャツの上から羽織り、腰に神器を装着する。
 ブーツの紐を締め、宿舎の入り口を出た。
 埃臭い廃墟が、朝日に目覚めていた。

 ※

 二十四時間。たったの二十四時間。だが、全てが変わるには十分すぎる二十四時間だった。
「起きて」二十四時間前、パジェットは乙葉に起こされた。「きれいな朝よ」
 その声は言葉と裏腹に、沈鬱で悲痛だった。目には闇夜も星もなく、栗色の虹彩の中で、瞳孔が開いていた。カーテン越しの光が注ぐのに、暗くて何も見えていないかのように。何かを探すように。視界が予感で暗いらしい。ならば俺の瞳孔も開いているだろうと考えたのを覚えている。カーテンを開けた。眩しくて、さすがに瞳孔も縮小した。そのときまだ、町は壊れていなかった。石畳の道を挟んで木造の銭湯があり、その高い煙突の上に、トンビが一羽浮いていた。
 パジェットと乙葉は黙って朝を見つめていた。暗い考えを押し殺していても、明るい考えが浮かぶわけではなかった。守るべき者が妻しかいない事実は、今はいいことかもしれない。頭に浮かんだのはそれだけだった。二人は二年前に入籍したのだが、今に至るまで子はできていない。
 六時五十分。放送局のサイレンが鳴った。朝の祈りには十分早い。
『国民のみなさんにお知らせします。本日、午前九時より、内閣府から、重大な発表が行われます。本日、午前九時より、内閣府から、重大な発表が行われます……』
 パジェットはカーテンを閉めた。どこかに行ってしまいたいのだが、チームとしてここにいなければならない。
 体が重い。魔力のせいではない。
 魔力とは何か?
 重力だ。

 記録されている限りでは、『それ』は西暦四七四年のラウェンナに最初に現れた。二年かけて帝国を荒らしまわった『それ』は現れるごとに姿を変え、巨大な海蛇であったとも、竜であったとも、毛皮をまとった堅い皮膚の巨大な獣であったともいわれる。
 以降、妖魔、悪魔、悪霊、物の怪、怨霊、厄神、祟り神、そのように呼ばれる存在は、あらゆる世界、あらゆる民族に牙をむき、歴史に介入していった。
 西暦四七六年、魔害により西ローマ帝国滅亡。
 西暦四七九年、宋滅亡。
 西暦五〇〇年、北魏滅亡。
 そして西暦五〇二年、人類は妖魔に対し、同盟を結んだ東ローマ帝国及びササン朝ペルシアにおいて初の勝利を収める。
 妖魔は人類を結束させたか?
 必ずしもそうではない。
 魔の干渉が衰える時代、人は激しく争った。魔害による損失を、侵略によって補おうと。またその責任を、他国の宗教や信仰に負わせようとして。
 その時代のほうこそが、魔の時代と言えよう。

「おはよう」
 個室が並ぶ廊下の突き当たりに柿崎がいた。階段の上から、踊り場の窓の向こうを見ている。趣味なのか知らないが、男っぽい服装をよくしている。髪も短い。胸を見れば、かろうじて女だとわかる。潰しているのだ。女だとなめられるから、らしい。たしかに体格は華奢で、力強くは見えない。彼女の左側の肩から手首までを、黄緑色のはかなげな翅が覆い隠している。オオミズアオという蛾だ……この異様な大きさを除けば蛾と呼べよう。これが彼女の神器、世にも珍しい生体型の神器だった。
 柿崎はパジェットを見ずに「おはよう」と言ったが、彼女の神器は、黄色い触角をひこひこ動かしてパジェットを見た。一心同体ではないかと思う。ああ、とパジェットは気のない挨拶を返した。
「さっきの放送、聞いたかい?」
 と、柿崎。やはりパジェットを見ない。窓の向こうに何が見える? その、人の目で見ているのか? 蛾の複眼で見ているのか? 柿崎はいつも微笑んでいるが、その表情を滅多に変えない。楽しくて微笑んでいるわけではないだろう。心を隠すためだろう。
「聞いたぜ」
「何だろうね。ま、大体予想はつくけれど」
 パジェットは彼女と話をしたくなかった。朝からうんざりだ。だが柿崎は質問を重ねた。
「どうだろう。逃げるかな? 戦うかな?」
「十中八九、逃げるだろうな」パジェットは応じた。「でなきゃ、クーデターは避けられんだろう。国務防衛軍の偉いさん方は、揃いも揃ってキレまくってるからな」
 ふふん、と鼻を鳴らし、柿崎は耳にかかる短い髪を払った。その動作だけは妙に女らしいのが、パジェットは気にくわなかった。見ていて痛々しいからだ。
 廊下の一番手前の個室が開き、チームリーダーの武藤が顔を出した。髪はぼさぼさ。無精髭を生やし、むさ苦しい。
「何にしろ、その放送はエリアマネージャーと聞くことになるだろうな」
 部屋から会話を聞いていたらしい。パジェットは寝起きのリーダーに肩をすくめた。
「エリアマネージャーは別府から動きませんよ」
「電話会議だ。それにもうチームマネージャーもろとも別府から逃げている。お前らも撤収の準備をしておけ」
「撤収、ですか」
「私情を挟むな。任地の民間人に同情するな。これは我々の鉄則だ」
 と、言いながら部屋から出てきた。目の前を通り過ぎ、階段を下りていく。その背中に、聞こえるか聞こえないか、という声で答えた。
「わかってますよ」

 宇宙を支配する四つの力。電磁気力。強い力。弱い力。重力。これらの力は宇宙創成時には同等であったはずだが、重力はほかの三つに比べて非常に弱い。
 外宇宙に流出しているのだ。
 そして、逆に外宇宙から流入してくる重力こそが妖魔であり、人間が加工して用いることのできる魔力であると考えられる。
 最初の妖魔の侵攻よりおよそ一五〇〇年。これが、唯一現在の人類にわかっていることだ。

 魔物の跋扈(ばっこ)。呪詛の蔓延。それが当たり前に起こる世で、あの『災厄』が日本の現代史に残る出来事になろうとは、十年前の時点では、恐らく誰も想像していなかっただろう。
 暁基五〇年。軽沢地下市で『それ』は起きた。『それ』とは何か? 何が起きたのか、居合わせた誰にもわからなかった。目撃者十数名の証言はこうだ。
『重力波変調のサイレンが鳴ったんです。最初は警戒レベルCでした。それがいきなりレベルSに跳ね上がったんです。避難する暇もありませんでした。その直後に周りにいた人がバタって倒れたり、うずくまったりし始めて……』
 倒れたりうずくまったりしたのは七人。全員女性だった。三十歳が一人、二十八歳が一人、あとは全員未成年者だ。一番若いのが、七歳の子供だった。
 ありがちな無差別憑依であれば、すぐに解決するはずだった。三日以内に、誰もが異常を認識した。三日経っても、何が起きたか誰にもわからないままだったのだ。
 何かが女性たちに憑依していることは明らかだった。だが正体を特定できなかった。いかなる祓い清めも、他国の宗教による除霊・浄霊も、それには通用しなかった。それは、ただあった。憑依した相手を殺すでも、蝕むでもなく。
 その事件は『災厄』、起きた日は『災厄の日』と呼ばれるようになった。それは『呪詛』、呪詛に憑依された女性たちは『憑依者』と、ただ呼ばれるようになった。憑依者たちはその身の上を隠し、それぞれの人生を歩いている。彼女たちが死ねば、呪詛がどうなるかはわからない。だがそれはまだまだ先のこと。
 そのはずだった。世間は彼女たちを忘れていた。二か月前までは。
 二か月前、憑依者の一人が、身に宿す呪詛の力を抑えきれなくなったのだ。
 憑依者の名は相澤序峰(じょみね)。十八歳。彼女は長らく高千穂市の聖域に軟禁されていた。そのような処遇となったのは、彼女に好ましくない影響を与える懸念のある父親から引き離しておくためだった。序峰の父・峰雪は、呪詛が八百万の神の一柱であると信じて疑わなかった。娘には神がついている。娘は神に選ばれた。そこから、娘は生き神だ、と飛躍するに至るまで、時間はかからなかった。
 彼は娘を名目上の教祖とする新興宗教団体『峰の会』を立ち上げた。
 神の名は儲かる。
 宗教団体としての認可が下りず、税の免除は受けられないにしろ、彼と彼の会は、極右団体としての活動で、その界隈での名声を高めていった。相澤峰雪はもともと国粋主義者だったのだ。人も金も集まった。
 峰雪は、序峰が隠れる高千穂市に『峰の会』の本拠地をおいた。その活動を制限したり、序峰との接触を禁じる法律はなかった。だから、序峰を軟禁しておく以外に対処のしようがなかったのだ。
 事件が起きたのは、五月一日。序峰は一時帰宅を許されて、『峰の会』本拠地に寄宿していた。午後十時、高千穂神宮の高位の巫女が不吉な予兆を感知した。それを受け、序峰の身柄を確保すべく、聖務防衛軍の一部隊が『峰の会』拠点に突入した。
 遅かった。
 呪詛は暴走し、部隊は全滅した。
 呪詛は高千穂市で惨劇を繰り広げた。荒ぶる神そのままに。市の観光地と住宅地が黒い炎で焼き尽くされ、三千人が死んだ。
 序峰は今、霧島連山を占拠している。九百年前に封印された妖魔が純化され、良質な霊晶石の鉱脈となったのだ。その採掘地から人を追い出し、その施設に『峰の会』の生き残りや、彼女とともに国を荒らすことに魅惑を感じるはみ出しものたちを住まわせている。
 厄介なのは、彼女が転移術を用いることだ。
 序峰は、序峰の名が呼ばれる場所に現れる。現れて荒らすのだ。彼女は一度、高千穂神宮に祀られる神々の力の前に敗走している。無敵ではない。だが、だからと言って呼びたい者はいない。報道機関でさえ、相澤序峰を『峰の会会長』あるいは単に『教祖』『九州の教祖』と呼んでいる。初代会長、序峰の父は、序峰に殺されていた。
 二ヶ月で、序峰は南九州全域へと手を広げた。九州南部は見捨てられている。中部も見捨てられようとしている。怒田(ぬた)、長崎、海上の天草諸市、どこも避難民だらけだ。
 誰が序峰を止めるのか?
 防衛省管轄下の国務防衛軍か。
 聖務省管轄下の、聖職者たちからなる聖務防衛軍か。
 押しつけあっているのではない。むしろどちらも戦う準備はできている。いつまで経っても準備も決断もできないのは内閣府だ。井上総理、及び与党の結新(けっしん)党は、国民である序峰や『峰の会』に軍隊を向けることを未だに躊躇い続けていた。
 ただ、どうしても取り戻さなければならないものがある。
 鉱脈だ。
「特殊部隊が阿蘇の前線に展開しているわ」乙葉が言う。「警察の」
 食堂に十人あまりの男女が集まり、午前九時の放送を待っていた。民間軍事会社『両国同心社』の社員たちだ。乙葉だけ、特殊な状況でのみ雇用契約を結ぶ外部協力者で、あとは皆正規の社員だった。
 誰も何も言わない。
 テーブルには、市販のロールパンや果物の缶詰など、そのまま食べられるものが広げられていた。調理をする職員は逃げている。誰も料理をする気力がなかった。
 あまりに静まり返っているので、パジェットが肩を揺すって笑った。
「そりゃすげえ。公務員を削減したいらしいな」
「黙れ」
 武藤が唸った。その命令によって、先ほどよりも更に重い沈黙が食堂に満ちた。
 いかにもやる気のない顔をした井田が、焼き鳥の缶に手を伸ばした。缶が開く音、半ば啜るようにだらしなく食べ始める音を合図に、めいめいが無言の食事に戻った。
 パジェットたちがここにいるのは、霧島連山奪還に向けて民間軍事会社が投入されることになったからだ。国有の軍ではなく。
 任務内容は明確だ。仕事は、あくまで暴徒の鎮圧と排除のみ。暴徒。序峰への忠義などかけらもない、ただ略奪をしたいだけの屑どもだ。憑依者である序峰を殺してはいけない。憑依者が死ぬと、身に宿す呪詛がどのような暴走を始めるかわからないからだ。
 連中を排除し、採掘施設の奪取に成功したら、その土地は国有化され、両国同心社の関連子会社が採掘権を安く手に入れる計画となっている。
 黙っていないのは、聖務防衛軍及び国務防衛軍と、軍に守ってもらえると思っていた現地の民間人たちだ。激しいデモが繰り広げられる中、リーダーの武藤率いる十二名の先遣隊が柚富に送り込まれた。そのときには、国務防衛軍によるクーデターの噂がまことしやかに囁かれ、パジェットたちはこの柚富で、いかなる命令も受け取れず、一週間足止めされていた。
 このまま何もせずに撤収、という事態も予測された。そしてそうなった。戦うか? 逃げるか? 逃げたのだ、総理大臣が。
 鞍嗣(あんし)八年七月一日午前九時。事態の収拾がつかなくなり、井上総理は在任七年目にして逃げるように辞意を表明した。従って、民間軍事会社による霧島奪還作戦も白紙となったのだ。

 ※

 結局、現地で最初に受けた最も明確な指令は、即時撤収の命令だった。辞意表明の直後、序峰による阿蘇市への本格的な攻撃が始まったと、ラジオから流れてきた。道路は少しでも遠くへ逃げようとする人々で埋まっていた。無理な移動はできなかった。物理的にも……心象の面でも。
 対魔機動隊が展開する阿蘇はともかく、なぜ柚富が序峰の攻撃対象となったのか。とにかく彼女は転移術を用いて柚富を焼き尽くしに来た。
 柚富へと引き返す途中、ひどい爆発音が山中の道にも聞こえてきた。山の裏側の町で何が起きているのか、見えるはずもない。が、柚富市の誰もが逃げたわけではない以上、かなりの惨事となっていることは明らかだった。
 すぐに戻り、戦うことは許されなかった。国からの攻撃許可が下りていない以上、妖魔との突発的な遭遇戦を除いて交戦は許されない。そして、無線から伝えられたエリアマネージャーの判断はこうだった。
『これは遭遇戦ではない』
 かくて、戦い、人々を救い出す能力を持った十二名の男女は、柚富市を囲む山の裏側で輸送トラックの中に座ったまま、無為に時を過ごしたのである。
 柚富に帰ったとき、既にそこは廃墟だった。骨組みだけになった建物や瓦礫の中で、嘲笑うかのように、両国同心社が借り上げていた国民宿舎だけが無傷で残っていた。わざとなら洒落た奴だ。
 人はいた。
 トラックの走行音を聞きつけて、壁だけ残った建物や、倒れた木々や道路標識の陰から人々が出てきた。一人姿を見せると、たちまち十人以上が立ち上がった。
 汚れた服を着て、彼らはパジェットたちを遠巻きに取り囲んで見た。責めもせず、嘆きもせず、無言でじっと見た。
 最後に武藤が降りてきた。
「援助要請だが、却下された。ヘリは『教祖』を刺激する恐れがある」
 チームの全員に向けた言葉だが、この場にいる人々にも聞こえたはずだ。が、反応する者はいなかった。
 ちなみに、主要道路も全て破壊されている。
「機を見て山越えする」
 やはり、責められもしなかった。





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