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冷凍されたオシドリとチューリップ人の王国

趣味で書いている小説用のブログです。

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深淵われを見給えり〈3〉





 3.

 中学校にも高校にも行かなかった。だが序峰は中学だか高校だかの夢を見た。夢の登場人物たちが、許された数少ない娯楽である映画に出てくるような、学制服を着ていたからそうとわかったのだ。
 世界中の人間が自死へと急ぐ夢だった。重い曇り空の下で、男子学生が屋上のフェンスに取りついてよじ登り、飛び降り自殺をしようとしていた。小太りの男性教諭が慌てて駆けつけて、男子学生の制服を掴み、引きずり下ろした。すると彼の努力を嘲笑うように二人の女子学生があとから駆けてきて、たちまちフェンスをよじ登るとその上に後ろ向きに座り、それぞれが高笑いをして体を後ろに倒し、身投げをするのだ。
 やがて死者が町にあふれ、亡者の霊が世を支配し、生き残った者は怯えてトイレに身を隠す。人々に死を強要したのは序峰であり、しかも、これから怯える生き残りたちをも恐怖の内に殺し尽くさなければならない。例外はない。そういう夢だった。
 夢を破ったのは、遠い、だが明らかに峰の会拠点の敷地内で響く怒鳴り声だった。
 誰だろう? こんなところで騒ぐのは? 神を身に宿す選ばれし者、序峰の眠りを妨げるのは?
 電気をつけなくても、大きな窓の向こうの月と都市の明かりで十分明るかった。それでも階段を下りるために、照明をつけた。吊り下げられたランプにオレンジ色の光が点り、序峰は慌てず洋服に着替え、髪を梳き、かんざしを差した。
 靴を履き替えた。戸を開けて夜風を浴び、ふと雨の日について思いを巡らせた。雨の日、この部屋を出ようとするならば、雨を浴びながら長い外廊下を渡らなければならない。室内に浴室があるとはいえ。トイレがあるとはいえ。食事が部屋まで運ばれるとはいえ。序峰が濡れる必要はない。その気になれば、一生部屋から出る必要さえないのだ。序峰は叫びたくなった。何故叫びたくなったのか、理由はわからない。ただその事実が凄まじく不快だった。
 長い外廊下の奥の扉が開き、名前を知らない二人の男性会員が駆けつけてきた。
「何事!」
 鋭く問いただす。
「お嬢様、聖務防衛軍の祈祷官が――」
 目を外廊下の欄干の向こうにやった。本棟である向かいの建物の二階下の外廊下を、聖務防衛軍の兵士である神官たちが駆けてくる。十人ほどのチームだ。会員たちが抗議の声を上げている。
「何故?」
 無意識に尋ねていた。
「我々が用意したアパートにお嬢様が帰宅されていらっしゃらないことが――」
「そんなこと、連中はとっくに見通してたはずよ!」序峰は叫んだ。「何故? 何故今来るの? 今年は来るの? 去年は来なかったでしょう!」
 そして、会員たちの誰も序峰を守ろうとしていないことに気がついた。一度姿を消した兵士たちが、今度は一階下の外廊下にいる。抗議する会員たちは、彼らと取っ組み合うどころか、手を触れようとさえしない。形ばかり怒鳴るだけだ。
「何をやっているの!」我に返り叫ぶ。「あんたたち、扉を押さえなさい!」
 二人の男が、弾かれたように本棟への廊下を駆けていく。そして両開きの扉に手と体を押しつけた。
 そのとき、男たちの背中に重なって、序峰は渦を幻視した。
 黒い水の海と、光を理解しない闇。
 そして、序峰のそばにいて、ともに闇を見つめるもの。
 これだ、と、理解した。
 これの気配が、あいつらにもわかるんだ。
 誰がこれを知ったのだろう? 巫者か? 
 外廊下の向こうの扉が乱暴に叩かれた。二人の男が精一杯に力んでいるのがその姿勢でわかる。
「ここをあけなさい!」
 男の声が叫んだ。
「何様のつもりなの?」序峰は叫び返す。「何の権限でこの私の命令しているの? 愚か者!」
 少し、間が開いた。
 そののち数人が同時に扉に体当たりをした。二人の会員がたまらず吹き飛び、尻餅をついて、廊下の明かりとともに聖務防衛軍の一つのチームが外廊下になだれ込んできた。
 間もなく序峰にたどり着く。
 居室に駆け戻り、鍵をかけることは考えられなかった。隠れることはできない。彼らは序峰の腕を乱暴に掴むだろう。間もなく。そして連れていくのだ。誰も序峰を訪ねてこない場所から、誰も序峰を訪ねられない場所へ。
 そのどちらかしか、序峰にはないのだ。
「嫌だ」
 目の前が真っ暗になった。
 廊下の明かりも、眼下の街の明かりも、もはや理解が及ばない。
「嫌だ!」
 暗黒の渦が迫ってくる。
 あの渦の中に落ちるのだ。序峰を守る何かと一緒に。人格があるかないかもわからない存在とともに。
 序峰は理解した。
 それは神ではなかった。
 それだけがわかった。
「嫌だああああああっ!!」
 真っ黒い炎が、序峰と兵士たちの間に壁をなした。首を仰け反らせて叫ぶ、その声に押されたかのように、炎は一つの道となり、廊下を貫いた。
 誰も、断末魔を放つ間もなかった。序峰は兵士たちと二人の会員の末路を見なかった。
 星が見えた。何だろう? 闇は光を理解しない。序峰は光がわからない。絶叫の残響。消えていく。大きく開け放たれた口が、ゆっくり閉じていく。
 序峰はそれの名を知った。それを口にした。
 この世、此岸を焼き尽くす劫火。
「劫此(ごうし)」
 黒い炎の柱が序峰の前に立っていた。
 他には誰もいない。
 誰も来ない。
 誰も触れない。
 誰も見ない。
 そして、誰にも聞こえない。

 ※

「そっちはどう?」
 パソコン画面の向こうから、ほっそりした顔の女がパジェットに尋ねた。色白の肌と、くっきりと濃い黒髪との対比が素晴らしい。前髪は短く切っており、細く形のいい眉を見せている。目は垂れ目で、睫毛が長く、柔和なだけでなく、神秘的な暗さがある。唇は赤く小さい。鼻も小さい。身長百五十五センチの体はすべてのパーツが小さく見え、その自分とは対照的な女をパジェットは愛していた。
 女はパジェットの妻だった。
「どうって? 別に何も難しいことはない。一人で務まるような仕事だし、対象も聞き分けのない子供じゃないからな。手当ももらいすぎなくらいだ」
 パジェットは肩を竦めた。
 彼がいるホテルのスイートルームの一室は、無境界ネットワークの接続が許可されていた。パジェットがいるのは西国である高千穂市。乙葉がいるのは東国の東都だ。国内のネットワークは、無料で利用できる完全実名制の東国ネットあるいは西国ネットに分かたれる。東国と西国の間で接続を行うには、特別な許可がいる。全世界に接続できる有料かつ匿名の無境界ネットを利用するには、法人ないし個人で自治体の許可を得る必要がある。
 こうしたインターネットの規制が国民の権利の侵害に抵触するかどうかは、議論がわかれるところだ。パジェットは必要だと思っている。民間人が興味範囲で、そして匿名で呪術や魔術の知識を無節操に入手すれば、どのような災厄に見舞われるかわからない。それに、出張中に妻と話す程度の接続料を払う程度の余裕はある。
「お前は寂しくないか?」
 長谷部乙葉(おとは)はおっとり微笑みながら答えた。
「たかだか二泊三日じゃない。大丈夫よ。我慢できるわ」
 乙葉は束縛の強い女ではない。そこがよかった。
「それに、ネットがあればこうして話ができるわけだし。待てるわよ」
「井田のこと知ってるだろ?」
 仕事仲間の名を出した。
「ええ」
「あいつが女に逃げられた顛末、知ってるか?」
「散々聞いたわ。笑いものにして」困ったように眉を垂らす。「何でもネットで済まそうとして、直接会ったり、一緒に暮らそうとしなかったからって。どうしてそんな話を?」
「何となくさ」
「そうかしら。何だかあなたのほうが寂しがってるみたい」
 それを否定できず、曖昧に微笑んだ。当たりだった。一日だって、乙葉に会えずにいるのは寂しい。自分のような巨漢が乙女みたいな心を持っていることが、パジェットはおかしかった。
 乙葉はパジェットの誇りだった。命を懸けて炎の中から救い出した者だからだ。
 パジェットがまだ聖務防衛軍の兵士だったときだ。東都が鵺(ぬえ)の襲撃を受けた。その妖鳥は程なくして跡形もなく祓い清められたが、魔害による火災が近くの下町を舐め尽くした。
 ひどい火災だった。一人でも多くの人を誘導しなければならなかった。
 一人の老人が四階立ての雑居ビルの、二階の窓を指し、パジェットに叫んだ。『あそこに占い師の女の子が取り残されている』と。
 無茶なことをしたと思う。パジェットは煙が充満する雑居ビルに飛び込んだ。そして、乙葉を見つけだし、抱きかかえ、脱出した。まともに目を開けていられず、ずっと左目だけを薄く開けて火の明るさを見ていた。左目だけ視力が下がり、片眼鏡をするようになったのはそのためだ。
 パジェットはそのとき二十二歳。乙葉に関しては、小柄な体と幼く優しげな顔立ちから、十七か八の少女だと思っていた。実際には二十一歳だった。
 乙葉は過去を語らない女だ。過去の暗さと凄絶さが、時折言葉の端々から垣間見える程度だ。助けてくれた人にどうしても会いたい、という要望がパジェットの元に届き、生者と死者で溢れ返る病院へ赴いたときもそうだった。
 衰弱のせいか、乙葉は暗い目をしてた。火傷を負った上半身を包帯で巻かれ、横たわりながら、じっとパジェットを見上げてきた。そして、言ったことといえばこうだ。
『軍人さん。世界っていいですね』
 世界を恨む言葉ならたくさん聞いてきた。妖魔が跋扈(ばっこ)する世界が憎いと。人生を恨む言葉も聞いてきた。体に障害を追い、愛する人を亡くし、いっそ死ねばよかった、と。
 だが、乙葉はそうでなかった。
 何故、とパジェットは尋ねた。
『人がたくさんいる』彼女は喉を痛めており、仰向けの姿勢のまま辛そうにせき込んだ。『みんな生きてる』
 意識が戻る前に、海に行ってきたの、と、彼女は語り続けた。
『たくさんのバスが、海岸に向かっていったの。私も海岸に続く道を一人で歩いてた。とてもきれいな海に着くってわかってたから、すごく、わくわくした』
『それから?』
『だけど、戻ってくるバスは一台もなかった。私も海に着いたの。思った通りだった。すごくきれいな海だった。だけど、そこには私以外、誰もいなくって――』
『続けて』
『――寂しくて、寂しくて、それで戻ってきた……』
 それを聞いたとき、パジェットは乙葉を愛した。
「乙葉」
「何?」
「帰ったら――」
 休暇を申請する。二人でどこかに行こう。どこに旅行に行きたいか、考えておいてほしい。
 それを言おうとした瞬間、轟音とともに、外で赤い光が炸裂した。

 ※

 最初の爆発から五分経つ。パジェットは未だに自分が何を見ているのか理解できなかった。頭も感性も、理解を拒んでいた。
 闇が空に浮かんでいた。背景の夜空が昼の光に満たされて見えるほど濃い暗黒であった。暗黒の円盤。そこから、同じ暗黒に満たされた火柱が四方に降り注ぎ、それが建物に触れると、赤い光を放って爆発する。
 両国同心社の社用車の窓から見える光景は、ホテルの窓から見えた光景と変わらない。だが犠牲者の数は一秒ごとに増しているはずだ。爆発の一回ごとに。あの渦から黒い火柱が一つ降るごとに。
 相澤序峰はどこに行った? 地下市へ向かう螺旋有料道路(ループ)を急ぎながら、パジェットは思った。あの渦が浮かぶのは、ちょうど峰の会の本拠地の真上だ。目印となるクジラの形の無線ゴンドラも、映画館の看板も、世界中の美味が集まる万国レストランの看板も、既に消滅させられている。だが方角的には間違いない。序峰は? あの渦は妖魔か? 既に妖魔に殺されたか?
 違う。
 サイレンが鳴らない。あれは妖魔ではない。
 人為的な力だ。
 何が起きている? だがそれを質問できる相手はいない。
「長谷部さん」動揺を押し殺した声で、後ろの大野が尋ねてきた。「どうして戦わないんです?」
「私の任務はあなたの護衛です」パジェットもまた、努めて無感情に答えた。「このまま高千穂市を脱出します」
「そう」と、大野。「じゃあ、私が代わりに戦うわ」
 大野がシートベルトを外し、車のロックを外す。
 彼女が何をするつもりかわかっていた。走り続けるほうが、むしろ危険だった。パジェットはブレーキを踏んだ。大野が後部座席のドアを開け放ち、他に車のないループに飛び出した。
 パジェットもまた、運転席からループへと身を躍らせる。腰の後ろに手をやった。手を前に戻したとき、擲弾銃に似た銃が握られていた。銃ではない。神器だ。
 大野が叫ぶ。
「御母衣(みほろ)!」
 重力が不安定になり、走る勢いで前につんのめった。直後、いきなり世界が重くなった。どうにか転ばずに済んだ。
 重力が元通り安定した。大きな布のはためく音がパジェットの耳を打った。
 金色(こんじき)の光だった。オーロラに似ている。マントのようでもある。パジェットの巨体をもすっぽり包むほど大きなマントだ。それが、空中で、夜風に合わせてはためいていた。
 大野の結晶霊体。身に宿す呪詛が形を変えたもの。
 結晶霊体・御母衣(みほろ)の陰で、大野は毅然とした眼差しを都市の空に向けていた。
 警察の対魔機動隊が応戦していることに、パジェットは初めて気が付いた。幾筋もの火線が地上から放たれ、まっすぐ暗黒にのまれていく。
 まるで戦いになっていない。
 地上で爆発が起きるたび、火線の数が減っていく。
「序峰!」大野が御母衣に向けて叫んだ。「相澤序峰! 聞きなさい! 私が誰か、わかるでしょう!」
 パジェットは理解した。
 あれが序峰だ。あの闇が。あの、全てをのみ込む暗黒が。
 序峰は霊体結晶化の訓練を受けていないはずだ。なのに一体何故。その疑問には、パジェット自身が答えた。だからこそだ、と。
 あれは人の意志と技術による加工も封印もされていない、呪詛そのものが噴出した姿なのだ、と。これまでは序峰を聖域に閉じ込めることによって押さえつけていた。だが、この三日間の外泊許可。その間に、ついぞ噴出した。
 呪詛に意志はあるのかと、パジェットはふと思った。序峰は霊体の結晶化を行えず、またそれを封印する意志もない唯一の憑依者だった。つまり、呪詛を呪詛のまま扱える最後の者。だから、呪詛は、この機会を逃がさなかったのか、と。
 だとしたら、呪詛の正体を解明できるはずだ。序峰を保護観察下に置けば。
 だがそれは、無理そうに見えた。
『オバサン?』
 小馬鹿にした声が、御母衣の光を通して伝わった。少女の声。これが序峰の声だとパジェットは理解した。呪詛を糧とする結晶霊体・御母衣が、呪詛とリンクされたのだ。
「どういう真似かしら、序峰」
 大野はもう、怒りを抑えるのは無理そうであった。声が震えている。
「これはどういうこと? 自分が何をしているのか、あなた、わかってるの?」
 甲高い、狂ったような笑い声が、御母衣を通して返ってきた。
『なぁんにも? 私、あなたに怒られなきゃいけないことは、何にもしてないわ』
「ふざけないで! これほど人を殺しておきながら、何寝ぼけたこと」
『ねえ、オバサン。教えてあげる』
 殺戮を続けながら、序峰は平然と続けた。
『私にこうする力があることを知りながら、この街の神官たちはそれを否定したわ。私に特別なところはないって嘘をついて、有効に使えば世界を清めることができるこの力を、無為に潰(つい)えさせようとした。これは罪よ』
「清める?」
『この国は汚れすぎたのよ』その声が低くなった。『男と女は神の御前にあってさえ、べたべたべたべたくっつきあって、慎みを忘れた。子供はぎゃあぎゃあ喚いてばかりで、母親は咎めようともしない。毛唐の魔女が神のおわす街で異国の魔術を行って、国は日本人でありながら八百万の神を信奉しない異教徒の存在を許している』
 それが……と、大野が呻いた。
「それが何だって言うの?」
『この国は、きれいにならなきゃいけないの。きれいにするために、要らないものは捨てなきゃいけないの』
 暗黒の下、死が広がる。死を取り巻くようにして、煙と人々の阿鼻叫喚がループに立ち上ってくる。
「何が要らないっていうの? 要るものと要らないものの違いが、あなたにわかるって言うの?」
『そのために神々は私たちを選んだわ! だけど、私を除く他の六人は、体制に恭順した。汚れたのよ。あまねく神々の意志に背き、あなたたちもまた堕落した』
「勝手なことを――」
『正しいのは私。私一人。だから、私はあなたたちがしなかったことをするの。この国をきれいにする』
 大野はついに絶句した。
『ここは神々の国なの』
 序峰は饒舌なままだった。そして、その語り口は、淡々としていた。
『神々の意向を重んじようとしない人間は、この国に必要ない。この国に必要ない人間は、この国で生きているべきではない。ただ私一人だけが、神々のご計画を遂行する意思と能力を持っている』
 地上から応戦する火線が、ついぞ尽きた。
『だから、私を認めない奴は、神々を認めていない奴。神々を認めていない奴は、日本人じゃない奴。日本人じゃない奴は、神が愛するこの私を愛していない奴。私を愛していない奴は――』
 無言のうちにただ首を振る大野の前で、序峰の声が跳ね上がった。
『私を愛していない奴は、生きている必要がないのよ!』
 黒い火柱がまっすぐ大野のもとに飛んできた。パジェットが神器を構えるまでもなく、御母衣が大きくはためいた。それが、黒い火柱を打ち返す。
「消えた」
 大野が呟いた。
「何が」
「不安定な自我が。序峰はもういない。あれは呪いそのもの。災厄そのものです。彼女はもういない。つまり――」
 急速に昇る太陽のごとき輝きが、東の方角から差した。
 高千穂神宮の方角だ。降臨祈祷が行われたのだ。
 焼き尽くさんばかりの光の束が暗黒を貫いた。
「――相澤序峰は死にました。彼女は呪詛になりました」
 光が闇を貫き、消し去ろうとしたかに見えた。だが闇はそれを逃れ、北の方角へ去っていく。
 その場所で、新たな殺戮の赤い光が炸裂し始めた。
 御母衣と序峰は接続されていない。それはもう、閉ざされた。
 それでもパジェットは、序峰の哄笑をなお聞いた。
 大気を震わすその狂気。
 感性によって聞いたのだ。





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