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冷凍されたオシドリとチューリップ人の王国

趣味で書いている小説用のブログです。

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しそ香煎(こうせん)飲んだ。

紫蘇香煎飲んだ。
京都から取り寄せたやつ。
おいしかった。
おいしかったので猫の如水ちゃんが接客する如水カフェでも
取り扱うことにした。

いらっしゃいませー。
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ!(いらっしゃいませ)」
いやーめっきり寒くなりましたねー
本日から当店では香煎をご用意させていただいておりますがね、
えっ、あっ、さっそくご注文いただけますか? ありがとうございますぅ~。
如水ちゃん、お客様に紫蘇香煎お出しして。
「エ゛ッエ゛ッ……(わかんない)」
紫蘇香煎だよ、如水ちゃん、昨日届いたやつ。
「……エ゛ッエ゛ッ(おしぼりの事かなぁ)」
おしぼり持ってきたらイカンよ。香煎だからね、香煎。
「……エ゛ッエ゛ッ……(おひやの事かなぁ)」
おしぼりでもお冷でもないからね。
香煎だよ。こ、う、せ、ん。しそこうせん。分かる?
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ……(しそ光線……)」
そう、紫蘇香煎。
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ(……しそ光線……)」

暫くすると二足歩行するキジトラ白のオス猫如水ちゃんが
両手(前脚)で湯呑を乗せたお盆を持ってくる。
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ(おまたせしました)」
そして湯呑をテーブルに置く。
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ(おきゃくさましそビーム)」

なんの疑いもなく湯呑を口にしたお客さんの体が見る間に紫色に変色し口から
「しそビーーーーーーーームッ!!!」
しそビームを浴びた人間はたちまち紫蘇人間と化し、
紫蘇人間が跋扈する未来の社会では、
緑色タイプの紫蘇人間と紫色タイプの紫蘇人間、そして紫蘇人間化を拒む旧人類が、
三つ巴のあくなき戦いを開始する。
後世の人々から「黄昏の時代」と呼ばれる暗黒時代の始まりである。


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観光バスの乗客が全員如水ちゃん。

ブログがとまっていた。
だいたいブログを頻繁に更新している時期と言うのは
小説を書いていない時期なのだが、
この一週間小説を書いていたのかと言うとそんなことはない。
長編小説は完結間近でぱたりと書きたくなくなる。
書き終えてしまったらもう書けないからだ。

で、一週間何をしていたかと言うと
名古屋駅のエスカ地下街のマクドナルドの前に朝早くから集まっている
バスツアーの客たちを横目で見、
この全員がキジトラ白のオス猫の如水ちゃんだったらと考えてたりした。

鳴き声が汚くて食い意地が張っている猫の如水ちゃんが三十匹くらい群れていて、
それぞれ小さなグループを作り「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ」と喋っている。
するとバスガイドさんが現れて腰を落として
「チョチョチョチョチョチョチョチョ……」
と舌を鳴らして呼びながら、バックで歩いて如水ちゃんたちを表に誘導する。

如水ちゃんたちはそれぞれ「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ」と言いながら地下街を出、
外の寒さに驚いてまた「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ!」と騒ぐ。
全匹がバスに乗りこんだらバスが動き出し、バスガイドと運転手の紹介が始まったら
座席に丸くなって寝る(他人に関心がない)。
都市部を抜けて遠くに見えてくる山や途中の名所や行き先の謂れについて
バスガイドが解説を始めると、やっぱり丸くなって寝る(知的好奇心がない)。

しかし昼食の弁当が配られ始めると一斉に目をさまし、
「オェンオェンウワンウワンウワ」
「ウェ゛ッエ゛ッエ゛ッエ゛エ゛ー」
「ゥア゛ングア゛ングア゛ングァ゛」
と口々に喋りながら弁当を食う。
黙って食え。


飼い猫の如水ちゃんが接客する如水カフェというのを考えた。

その喫茶店の扉を開けると、人間ほどの大きさの、
鳴き声が汚いキジトラ白のオス猫『如水(じょすい)』が
白いエプロンをかけて二足歩行で出迎えてくれる。

入店するとまず如水が
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ!(いらっしゃいませ)」
それから
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ!(空いているお席におすわりください)」
コーヒーを頼むとやっぱり
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ」
と鳴いて二足歩行で奥に入っていく。

暫くするとコーヒーカップを持ってきて
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ!」
そこで客が
「あら、このコーヒー猫の毛が入ってるわよ」
と言うと、申し訳なさそうに耳を伏せて目をつぶって
「エ゛ッエ゛ッエ゛ッ」
と鳴く。
かわいい。


ヤマト運輸が来ない。

ヤマト運輸が来ない。
仕事が嫌になって荷物を道端にぽいっと捨てて泣きながら家に帰ったのかもしれない。
ゆうパックも来ない。
郵便局の人も仕事が嫌になって荷物を道端にぽいっと捨てて家に帰ったのかもしれない。

とか考えていたらヤマト運輸の人がきた。
三十過ぎくらいのニーチャンである。
ヤマト運輸の荷物だけでなくゆうパックも持ってきたので「これどうしたんですか」と聞くと「いやー道端に捨ててあったから持ってきたんですよヒドい話ですよね」
とか言うけどニーチャンの制服が血で真っ赤だし顔も血で真っ赤だし

あら憎らしい妬ましい私はあなたが来るまでお腹をすかせて待っていたのに
あなた郵便局の人を食べちゃったのねと思って伝票にサインをすると
呪いをこめた文字にあてられニーチャンが爆散
私はその肉片を拾って洗って猫と食う
幸せだ。


好きなものって口に入れたくなる。

好きな人を調理したい。
そしてそれを調理されてしまった本人と一緒に食べて
「おいしいねー」と笑いあいたい。
その絶対にありえない、矛盾している、
決定的に間違っている、
二度と正しい世界に戻れない、よじれた因果の世界、
それでいて満ち足りた、ほのぼのとした幸福感を味わいたい。
一面の曇りの朝、血霧のように空の一隅を太陽が汚している朝に、
私たちは漂流する家の中で陸地を夢見ている。


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とよね

Author:とよね
ファンタジーやSFをメインに小説を書いてます。下のカテゴリ欄から読めるよ!
★印つきは連載中。

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